2018年8月2日 藪中俊介氏

日時:2018年8月2日(木) 14:30〜16:00
場所:首都大学東京 8号館300号室
講師:藪中俊介氏 (京都大学)
題目:臨界点近くの2元混合系を記述するLocal renormalized functional theoryの応用

要旨:コロイド粒子や壁などに接した2元混合系では、境界と溶質の相互作用に起因して境界にどちらかの成分が選択的に吸着され組成の分布が生じる。臨界点の近くでは、このような濃度勾配は長距離にわたり、例えば、コロイド粒子などの物体が複数ある場合の吸着に起因した相互作用は、物質表面や溶液の性質によらない普遍的な振る舞いを示す[1]。このような系を臨界ゆらぎの効果を取り入れて扱うために、局所的なオーダーパラメータの値で決まる局所的相関長以下の揺らぎを繰り込んだ"Local renormalized functional theory”が考案されている[2]。
今回は、まずはLocal renormalized functional theoryの構成の仕方を議論したあと、応用として、2元混合系での(i) 2元混合系の臨界点での平板、円柱、球の周りの吸着プロファイル[3]、(ii) 臨界点の近くの2元混合系の狭い空間中での相分離ダイナミクス[4]を紹介する。また、最近、平均場的なモデルを用いて行われた、2元混合系中でのコロイドの抵抗係数の計算[5,6]をLocal renormalized functional theoryを用いることで、臨界ゆらぎの効果を取り込んだ上で行うことを検討しているので、それに関しても議論したいと考えている。

[1] C. Hertlein et al, Nature 451, 172 (2008).
[2] R. Okamoto and A. Onuki, J. Chem. Phys. 136, 114704 (2012).
[3] S. Yabunaka and A. Onuki, Phys. Rev. E 96, 032127 (2017).
[4] S. Yabunaka, R. Okamoto and A. Onuki, Phys. Rev. E 87, 032405 (2013).
[5] R. Okamoto, Y. Fujitani and S. Komura, JPSJ 82, 084003 (2013).
[6] Y. Fujitani,to appear in JPSJ (2018).