2018年9月25日 植松祐輝氏

日時:2018年9月25日(火) 14:00〜17:00(基礎+研究の二部構成)
場所:首都大学東京 8号館300号室
講師:植松祐輝氏 (九州大学)
題目:空気水界面における不純物効果

要旨:まず、界面物理化学の大きな問題の一つである空気水界面の電荷問題について紹介し、界面の熱力学を使って電解質溶液の表面張力とジョーンズ・レイ効果(表面張力の塩濃度に関する極小)について説明する。次にポアソン・ボルツマン方程式を用いた空気水界面の一次元平均場理論を使って電解質溶液の表面張力変化の計算をし、微量の電荷を帯びた不純物により、ジョーンズ・レイ効果を定量的に説明できることを示す [1]。この理論の帰結として、意図的にイオン性界面活性剤を加えると、表面張力の極小の大きさをコントロールできることがわかる。そこで、意図的にカチオン性界面活性剤を加え、NaCl溶液の表面張力測定の実験をした。その結果、マイクロモーラー程度の界面活性剤の添加で、NaCl濃度10mMから100mM程度に極小が現れた。イオンの表面活性パラメータはすべて実験結果と矛盾ない理論となっており、ジョーンズ・レイ効果がコントロールできないほど希薄な不純物により引き起こされていた可能性が非常に高い。このことを踏まえて、空気水界面の電荷問題に戻ると、この不純物が重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、まったく同じモデルで濡れ膜の分離圧と疎水性表面のゼータ電位の実験結果の理論的説明を試みる。最後に、不純物の正体と、関連するであろう空気水界面の他の異常性について展望する。

[1] Yuki Uematsu, Douwe J. Bonthuis, and Roland R. Netz, J. Phys. Chem. Lett. 9, 189–193 (2018).