2015年11月19日 菱田真史氏 (終了)

日時: 2015年11月19日(木)16:30〜18:30
場所: 首都大学東京 8号館302号室 
講師: 菱田真史氏(筑波大学
題目: リン脂質二重膜の物性に対する添加物の効果

要旨: リン脂質二重膜を基本構造としている生体膜中には、ステロール類やステロイド類、イソプレノイド、タンパク質など様々な有機分子が含まれている。これらの膜内有機分子はリン脂質二重膜の物性を制御しており、それによって膜の機能が発現していると考えられている。例えば代表的な膜内有機分子であるコレステロールは無秩序相(液晶相)にあるリン脂質二重膜を秩序化し、秩序相(ゲル相)にある膜を無秩序化することが知られる。無秩序相をとる脂質、秩序相をとる脂質とコレステロールを混ぜると、それぞれの相の秩序度合が近くなり、液-液相分離構造が現れる。それによって生体膜中でのラフト構造が誘起されていると考えられている。しかし一方で、コレステロール以外の分子が膜の物性にどのような影響を持つのかはほとんど明らかになっていなかった。本研究ではまず直鎖状のアルカンを添加し、柔軟な分子が膜に与える影響を調べた[1,2]。すると、コア状で硬い分子であるコレステロールとは全く正反対の効果を持つことが分かり、特に秩序相において膜がより秩序化することが分かった。このことは添加分子の分子形状が膜物性に与える影響を左右していることを示している。そこで分子内にコア状の部位と柔軟な部位を両方持つ分子を添加し、膜への影響を調べることで、分子形状が膜物性にどのように関わるのかを調べた。また、光照射によって分子形状が変化する分子を用いることでも分子形状の影響を調べた[3]。

[1] Mafumi Hishida, et al., Chem. Phys. Lipids, 188, 61-67 (2015).
[2] Mafumi Hishida, et al., submitting
[3] Koyomi Nakazawa, et al., Chem. Lett., 43, 1352-1354 (2014).