大学院集中講義@九州大学 2018年1月23日〜25日 好村滋行

九州大学 理学府物理学専攻 大学院集中講義
講師:好村滋行(首都大学東京
題目:バイオ・ソフトマター系のマイクロレオロジー
日程:
2018年1月23日(火) 13:00〜14:30 14:50〜16:20
     1月24日(水) 10:30〜12:00 13:00〜14:30 14:50〜16:20
     1月25日(木) 10:30〜12:00 13:00〜14:30 14:50〜15:50
場所:物理学科会議室(A-711室)

講義概要:マイクロレオロジーとは、コロイド粒子などの微粒子のブラウン運動や、その外力に対する応答を測定することによって、極めて微小量の物質の粘弾性的性質を調べる新しい実験手法である。この方法は物質としてのソフトマターレオロジーを調べるために広く用いられているだけではなく、近年では細胞一個の弾性率の周波数依存性を測定するなど、生体系への適用も広がりつつある。一方、非平衡ソフトマター系やバイオ系にも適用可能なマイクロレオロジーの基本原理を確立するためには、本質的に非平衡系のゆらぎと構造の複雑な関連性を理解する必要がある。集中講義では、熱平衡系のマイクロレオロジーの基礎理論から出発して、実験における具体的な手法や様々な工夫について解説する。さらに、熱平衡系の理論が細胞などの非平衡系でどのように破れるかを測定することによって、生物の非平衡性を定量的に特徴づけるいくつかの試みについて紹介する。最後に、現在のマイクロレオロジーの限界や、いくつかの新しいマイクロレオロジーの可能性についても言及する。

(1)連続媒質中のブラウン運動
・一般化されたランジュバン方程式(GLE)
・時間相関関数と応答関数
・揺動散逸定理
・連続体の運動方程式と構成方程式
・線形粘弾性の対応原理
・粘弾性による異常拡散

(2)熱平衡系のマイクロレオロジー
・パッシブ・マイクロレオロジー
・一般化されたストークス・アインシュタイン関係式(GSER)
・1点マイクロレオロジーと2点マイクロレオロジー
・アクティブ・マイクロレオロジー
・一般化されたストークス関係式(GSR
・ゲルの二流体モデルとマイクロレオロジー

(3)非平衡系のマイクロレオロジー
・揺動散逸定理の破れ
非平衡ゲルのマイクロレオロジー
バクテリア・サスペンションのマイクロレオロジー
・正常細胞とがん細胞のマイクロレオロジー
赤血球のマイクロレオロジー

(4)新しいマイクロレオロジー
・構造流体(不均一系)のマイクロレオロジー
非線形アクティブ・マイクロレオロジー
・生体膜マイクロレオロジー
・スイマーマイクロレオロジー