2016年1月7日 渡辺千穂氏 (終了)

日時: 2016年1月7日(木)16:30〜18:30
場所: 首都大学東京 8号館301号室 
講師: 渡辺千穂氏(パリ第7大学)
題目: スフィンゴシンとスフィンゴシン一リン酸が脂質膜特性に与える影響

要旨: スフィンゴシン(Sph)とスフィンゴシン一リン酸(S1P)はセラミド(Cer)を前駆体として生成される、酵素反応により互いに変換可能な、酵母から植物、哺乳類まで普遍的に存在する生理活性脂質である。この2つの脂質は、ともに一本鎖の、生理的pHにおいて反対の電荷を持つ。興味深いことに、Cer, Sph, S1Pはそれらの存在比により、細胞の運命(cell fate)を決めることが知られており、その性質から、このシステムはスフィンゴ脂質レオスタット(sphingolipid rheostat)と呼ばれる。例えば、セラミドとスフィンゴシンは細胞死を、S1Pは細胞増殖を促進することが知られているが、これらの効果は、スフィンゴシン、S1Pのセカンドメッセンジャーとしての機能の他に、これらの脂質が生体膜特性に与える影響にもよっている可能性がある。そこで、本研究ではスフィンゴシンとS1Pが別々に、また共に膜に存在する際、膜特性に与える影響を脂質密度、脂質二分子膜双極子ポテンシャル、膜表面電位およびマイクロドメイン形成に着目して調査した。その結果、SphとS1Pを混合した際、脂質密度では相乗効果が、静電的特性では相助作用が確認された。これらの結果から、スフィンゴシン、S1Pが膜脂質として生理活性に与えうる影響を考察した。

[1] C. Watanabe, N. Puff, G. Staneva, M. Seigneuret, and M. I. Angelova, Langmuir 30, 13956 (2014).
[2] C. Watanabe, N. Puff, G. Staneva, M. I. Angelova, and M. Seigneuret, Colloids Surfaces A Physicochem. Eng. Asp. 483, 181 (2015).